DX関連トレーニングの現役講師である上野 三由紀氏による「3分で読めるデザイン思考」コラムシリーズを、今回より全5回お送りいたします。
第1回の今回は、今後デザイン思考をご紹介いただくにあたって「デザイン思考とは?」の部分を解説いただきます。
皆さん、こんにちは。DX関連コースの担当講師、上野と申します。
企業や組織がDXで成果を出すには、「デザイン思考」が必須と言われています。DXを始める前に知っておきたいデザイン思考の基本を、「3分で読める」シリーズ、全5回の連載でお届けします。
第1回は、なぜDXにデザイン思考が必要なのかについて考えます。
経済産業省のデジタルガバナンス・コード3.0では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
少し固い表現ですが、スピード感をもって環境変化に対応することと、サービスやビジネスモデルの変革により競争力を強化することがポイントです。デジタル技術は道具であり目的ではありません。
DX推進にあたって陥りがちな落とし穴に、最新技術に飛びつき手段と目的が逆転する技術偏重や、企画・設計に時間をかけ過ぎるスピード感の欠落があります。このような落とし穴を避けるには、ユーザーを起点とし仮説検証のサイクルを素早く回すデザイン思考が欠かせません。
デザイン思考に決まった定義はありませんが、端的に表現するとデザイナーのものの見方や考え方を課題の発見と解決に使おうとするものです。デザイン思考のアプローチは、課題=誰かの困りごとの発見から始まります。
「ユーザーが本当に求めているものは何か?」「ユーザーの本質的な課題は何か?」を追求し、ユーザー自身も気づいていないような潜在的なニーズ(これを「インサイト」と呼んでいます)を見つけ出します。インサイトに基づき解決策を考え、ユーザーからフィードバックを貰って検証することを繰り返します。
デザイン思考は、「イノベーションを起こすための思考法」、「AppleやGoogleも取り入れている思考法」、と言われると思わず身構えてしまいませんか?
しかし、相手をよく観察し言わず語らずのうちに望むところを察しようとする日本の文化は、デザイン思考に向いていると言えそうです。
DXは「顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革」、つまり、誰かのために、新しい価値を提供することを目的とします。最初に、「誰のために行うのか?」「なぜ行うのか?」という根本的な問いを立てなければなりません。
ユーザーが潜在的に抱える課題の発見にフォーカスするデザイン思考は、解決すべき事柄が明確でない場合や、従来の延長線上ではなく新しい何かを生み出したい場合に適しています。
誰かに何らかの価値を提供することはすべてのビジネスに共通ですから、DX「には」デザイン思考が必須、というよりも、DX「にも」デザイン思考が必須と言うべきかもしれません。
デザイン思考は、すべてのビジネスパーソンが身につけるべきスキルです。DXに関する基礎的な知識やスキル/マインドの指針を示す「DXリテラシー標準」にも、デザイン思考は含まれています。
デザイン思考には5つのステップがあります(5つのプロセスとも呼ばれます)。
ステップと記載しましたが、一方通行の流れではありません。この5つのステップを常に意識し自由に行き来しながら、ユーザーの本質的な課題へアプローチする、と考えてください。
1. 共感 (Empathize):ユーザーの日常生活や行動、置かれている状況をありのままに理解し、インサイト(洞察)を見出す
2. 問題定義 (Define):インサイトに基づき仮説を立て、本質的な問題を定義する
3. 創造 (Ideate):問題を解決するためのアイデアを量産し、次のプロセスに進めるものを選択する
4. プロトタイプ (Prototype):アイデアを検証するための「モノ」を作る
5. テスト (Test):ユーザーにプロトタイプを体験してもらい、フィードバックを得る
次回は、ユーザーを深く理解する「共感(Empathize)」のステップをご紹介します。
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