DX関連トレーニングの現役講師である上野 三由紀氏による「3分で読めるデザイン思考」コラムシリーズ第3回。
今回は、デザイン思考5つのステップの第2ステップをご紹介いただきます。
皆さん、こんにちは。DX関連コースの担当講師、上野と申します。
3分で読めるデザイン思考、第3回は問題定義 (Define)のステップをご紹介します。
このステップでは、インサイトに基づきユーザーのニーズを捉え、本質的な問題を定義します。
ニーズは「目的」や「必要」を意味し、「~したい」とか「~したくない」と表現できます。ウォンツはニーズを満たすための「手段」や「具体的な欲求」を意味し、「~が欲しい」と表現できます。ウォンツはユーザー自身がニーズを満たすと考えているソリューションであり、大抵の場合、既存の製品やサービスです。
例えば、「のどの渇きをいやしたい」というニーズに対して、「冷たいコーラを飲みたい」がウォンツです。問題定義で捉えるべきはウォンツの裏にあるニーズです。
ニーズには、顕在ニーズと潜在ニーズがあります。顕在ニーズはユーザーが自覚しているニーズです。潜在ニーズはユーザーが自覚していないニーズ、つまり何らかの不満や欲求はあるものの、どうしたいのかが自分自身で言語化できていない状態です。
把握しやすい顕在ニーズに基づく製品やサービスは競合が多く、レッドオーシャンとなる傾向があります。これに対して、ユーザー自身が認識していない潜在ニーズを発見できれば新たな価値提案につなげることが可能となります。
問題定義にあたってはリフレーミングも重要です。リフレーミングで広く知られた例に、『なかなか来ないエレベーター』があります。
なかなか来ないエレベーターがあり、オフィスビルのオーナーにはテナントからクレームが多く寄せられている。解決策を求められた時、多くの人が提案したのはエレベーターそのものの性能向上に関するもの。例えば、「エレベーターを取り替える」、「強力なモーターに交換する」、「エレベーターを動かすアルゴリズムをアップグレードしたらよいかもしれない」。
ところが、ある人は、もっと鮮やかな解決策を示した。「エレベーターの横に鏡を取り付けなさい」。この方法は、苦情を減らすのに極めて有効だと分かった。なぜなら人間は、思わず見入るようなものが与えられると、時間を経つことを忘れがちだから。
リフレーミングは、問題を異なる視点で見ることです。もちろん最初に定義した問題が必ずしも誤っている訳ではありません。リフレーミングのポイントは、解決すべきより良い問題を検討する点です。
(出典は、トーマス・ウェデル=ウェデルスボルグによる論文「そもそも解決すべきは本当にその問題なのか」、ハーバードビジネスレビューの2018年2月号で読むことができます)
PoVは解決すべき問題を具体的に定義したものです。
PoVのテンプレートは以下の形式が一般的です。
[ユーザー]は、
[ユーザーのニーズ]をする必要があった
なぜなら[驚くようなインサイト]のためだ
研修にご参加くださったお客様からは、「驚くようなインサイトが難しい」、「インサイトというよりは当たり前の理由になってしまう」と、ご質問頂くことが多いです。
良いPoVやインサイトを作るのに役立つ簡単な工夫として、「しかし」という言葉を使ってみる、というものがあります。当たり前の理由の後に、「実は」とか「しかし」という言葉をはさんで続けてみてください。
PoVは仮説ですから、本質的な問題を捉えられたかどうかは後のステップで検証します。PoVを考える際に大切なことは、「正しいかどうか」ではなく、「焦点が絞られているか」を判断基準とすることです。
HMWはアイデアを創造するためのテーマです。アイデア出しを始めるための短い質問とも言えます。
HMWのテンプレートは以下の形式が一般的です。
どうしたら我々は、[××という問題]を、
[●●という状態]にできるか?
HMWクエスチョンを作成する時には、次のような点に留意します。
〇 適当な粒度を意識する:粒度が大きすぎるとアイデアが発散しすぎて「何でもあり」の状態になってしまいます。逆に小さすぎると革新的なアイデアが出にくくなります
〇 解決策を想定しない:特定の解決策を示唆することは避ける問いにします
次回は、解決策を生み出す「創造 (Ideate)」のステップをご紹介します。
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